夢を追う海賊医師「ヒルルク」

ドラム王国のヤブ医師であり、チョッパーの父親的存在のヒルルク。今回は彼についてです。

はっきり言って、第一印象は「ひどすぎる!」というのが彼の初登場シーンです。患者を助けたいという思いは崇高でも、実際に行う行為は治療とはほど遠く、何の罪もない一般市民を余計に命の危険にさらしてしまっています。両親をひどい目に遭わされた少女にとっては、トラウマになりかねない暴挙です(個人的には、このシーンが強烈すぎて、どうしても彼をひいき目に見ることはできません)。

それでも、チョッパーとの出会いが描かれ、彼の優しい面が目立つようになって、彼の評価は上がっていくことになります。もし、彼が誰に対しても人道的な治療を行い、みんなからあがめられているようなキャラクターであったら、チョッパーへの対応も「当たり前」のことになってしまい、感動にもつながりません。そういった意味で、彼は「悪(ワル)」な部分を残されたのかもしれませんね。

彼は国(=国民=人)を救うという夢に生き、その意志はチョッパーに、そしてドルトンにも受け継がれました。行なおうとする行為は悪いところ(病気)を治す(手助けをする)「治療」であり、「医療」行為です。チョッパーはその彼の背中を見て、医師としての道を歩み出しました。ですから、チョッパーにとってヒルルクは、医師の原点といえる存在でしょう。

しかし読み返してみると、ヒルルクがチョッパーに医術を教えているようなシーンはまったくありません。実際、彼の人に対する医療技術はうさん臭いものでしたから、人に教えられるものでもなかったでしょう。もちろん、医師の「心」の部分はしっかり受け継がれているわけなので、師であることには変わりないのですが(医術の方の師はドクトリーヌですね)。

極端な言い方をすれば、ヒルルクのより大きな役割は、チョッパーにとっての「海賊」の原点となることなのではないでしょうか。彼は海賊ではなく元泥棒の医者であるわけですが、夢に生き、信念を貫く姿勢、自由で型破りな生き方は、(ルフィ達)海賊にそっくりです。彼がドクロの旗について語り、まだ見ぬ海賊という存在を教え、いずれ海に出るよう勧めたことが、「海賊」チョッパーの始まりです。

「海賊」兼「医師」すなわち、麦わらの一味の「船医」となったチョッパー。日々を必死に生き抜き、師の二つの姿を追っていると思うと健気に感じますし、チョッパーにとってのヒルルクの存在の大きさを、改めて思い知らされる気がします。

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