憎めない引き立て役「ジャイロ」

南の海(サウスブルー)出身の海賊、蟹手のジャイロ。ホーディの作中デビュー戦の相手に選ばれてしまった気の毒な彼について、少し見ていきたいと思います。

ジャイロは魚人島編の序盤に登場し、魚人街から逃げようとするところが描かれます。左手にはクロコダイルよりも派手なカニの爪の義手を装備しているものの、全体的な見た目はそれほど凶悪な海賊といった感じではありません。「静カニ」とか「バカちん」というセリフも愛嬌があって、どこか憎めないキャラなんですよね。

主に主人公達と戦う前に、その相手となるキャラの強さをわかりやすく描く方法として、引き立て役(噛ませ犬)は重要な役割を果たします。「ワンピース」の中でも、いろいろなキャラが引き立て役として立派に振舞い、倒されています。その引き立て役となった者は、事前に一般市民を虐げるなど不快な言動を見せているため、たとえ敵キャラに倒される場合であっても、いい気味だとか、ざまあみろだとかいう気持ちを抱くことが多いのではないでしょうか。

ところが、ジャイロの場合はだいぶ違います。海賊を名乗り賞金首であるわけですから、描かれていないところで悪さをしている可能性は十分ありますが、少なくとも作中ではそんなシーンはありません。おれは強いのだと自分の方から相手に仕掛けているわけでもなく、ホーディの支配からこっそり逃れようとしていただけなのです。結果的に、ホーディのしていることは弱い者いじめにすぎなくなっているわけなんですよね。つまり、ジャイロが身をもって示したのは、ホーディの強さよりもホーディの憎らしさの方である、といえるのではないでしょうか。倒され役に選ばれてしまったのは気の毒ですが、相対的に彼の好感度は概ね高まったと思われますので、むしろ彼は得をしたのかもしれません。

ジャイロの強さについても少し見ておきます。少なくとも偉大なる航路(グランドライン)前半を越えてきた強者であり、クラーケンに襲われずに済むなど運のいいところも実力のうちとすれば、海賊団として新世界に臨むだけのレベルはあったと思われます。ホーディにはいいところなく敗れてしまいましたが、そのホーディは戦いの前に、E・S(エネルギー・ステロイド)を最低4粒は飲んでいるんですよね。(とんでもない設定とはいえ)通常時の16倍以上の力の魚人相手なら、やむを得ないでしょう。むしろ、ホーディにそれだけの薬を飲ませるだけの力があったということで、高評価といえなくもありません。

ホーディの強さを伝えるメッセンジャーにされたことで、命だけは取り留めたと思われるジャイロ。タイミングが少しずれていれば、ルフィの強さを直接伝える者となっていたのでしょうけど、結局ルフィがホーディを倒したという噂もすぐに広まるはずですから、彼も間接的にルフィの強さを広めることになるのでしょう。トラウマとなってもう海賊はしていないかもしれませんが、新世界で心機一転の再スタートを切っていてほしいものです。

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